250Y飛んでバンカーに入るより飛距離180Yでフェアウェーキープの方が打数を稼げる Golfmetricsを活用したプレー分析と対策
アメリカPGAツアーで使われているSG(ストロークス・ゲインド)という指標があります。
SGの詳細は書籍「ゴルフ データ革命」に書かれていますが、ざっくり説明すると「私の全てのショット・パットと上級者(アメリカツアープロやハンディ0のスクラッチプレーヤー)のショット・パットを比較して、どのショット・パットで上級者に対して何打稼いだか」というデータです。
SGという指標を使った分析は「Golfmetrics(ゴルフメトリックス)」というスマホアプリで行うことができます。
現在、試しにこのGolfmetricsを1ケ月利用してみていますが、あまりに悪いスコアはスクラッチプレーヤーと比較しても全てが悪すぎて比較にならないため、自分の中でそこそこのスコアが出た際に、このアプリで詳細を分析しています。
先日、ホームコースの美らオーチャードゴルフ倶楽部でプレーした際に、人生初の90切りである87というスコアを出すことができたので、このラウンドを分析してみたいと思います。
SGはこれから打つ残り距離とライ、そしてショットの結果、残り距離何ヤードのどんなライに落ちたのかのみから分析するため、実際のスコアの差とは異なることがあります。
スコアは87なのでスクラッチプレーヤーに対しては15打負けた計算ですが、この日はSGをもとにした分析ではスクラッチプレーヤーに対して14.9打損していました。
内訳は
・パー4・パー5のティーショット:2.0打損した
・アプローチ(上記を除く100ヤード以上のショット):5.4打損した
・ショートゲーム(100ヤード以内のパッティングを除くショット):7.4打損した
・パッティング:0.1打損した
という内容で、最も多く打数を損したのがショートゲームだったというデータになります。
私の感覚では、「グリーン周りの20~30ヤードくらいからの寄せがピン1メートルくらいに寄って寄せワン」というのが何度もあった手応えだったので、ショートゲームで最も多く打数を損していたというのは意外なデータです。
このような「『自分の感覚』と『統計に基づく分析』との差を正確に認識し、課題を把握して練習する」というのはこの分析の重要な目的でもあるので、この点について詳しく分析してみたい思います。
1.パー4・パー5のティーショットについて
この日はスクラッチプレーヤーに対して2.0打、パー4・パー5のティーショットで打数を損しています。
特に大きく打数を損しているのは以下です。
13番(335ヤード):残り150ヤードの左のバンカーに入れてしまう(飛距離185ヤード)
→0.49打損した
4番(451ヤード):打ち上げのためドライバーで残り290ヤードのフェアウェーまでしか飛ばず(飛距離161ヤード)
→0.47打損した
17番(460ヤード):残り240ヤードの右のバンカーに入れてしまう(飛距離220ヤード)
→0.42打損した
2番(495ヤード):朝早くの2番だったので体が動いておらずドライバーで残り320ヤードのフェアウェーまでしか飛ばず(飛距離175ヤード)
→0.23打損した
この日のパー4・パー5のティーショットでは、9番で飛距離205ヤードでフェアウェーに運んだ際、SGが0.00(スクラッチプレーヤーに対して稼いでも損してもいない)なので、飛距離がこれ以下になるか、飛距離はこれ以上でもバンカーやラフに入れてしまうとパー4・パー5のティーショットで打数を損してしまう計算になります。
これに対して、パー4・パー5でスクラッチプレーヤーに対して打数を稼いだのは205ヤード飛ばして0.01打稼いだ6番と、220ヤード飛ばして0.09打稼いだ7番のみでした。
私くらいのドライバーの飛距離だと、今の時点では、これ以上大幅に飛距離を伸ばして大きく打数を稼ぐのは難しいので、コースではフェアウェーキープをすることが打数を稼ぐために重要であると言えそうです。
なお、このアプリで集計を取り始めて以来の私のドライバーの平均飛距離は209ヤードですが、この日の平均飛距離は199ヤードなので、普段より飛んでいないことになります。
「平均飛距離」は大チョロも含めて平均してしまうので、ナイスショットをした際の飛距離を見る際には「75パーセンタイル飛距離(全ショットのうち25%はその飛距離を上回り、75%はその飛距離を下回る)」を見ることもあります。
このアプリで集計を取り始めて以来の私の75パーセンタイル飛距離は225ヤードですが、この日は209ヤードだったので、こちらも「この日のナイスショットはいつものナイスショットより飛んでいない」と言えそうです。
ところが、このアプリで集計を取り始めて以来のパー4・パー5のティーショットのSGは1ラウンドあたり2.8打損ですが、この日は2.0打の損でした。
これはパー4・パー5のティーショットは10ヤード~20ヤードくらい飛距離を飛ばすより、フェアウェーキープの方が重要であることを示しています。
350ヤードのホールのティーショットで、何ヤード飛ばして、どんなライに落ちるとスクラッチプレーヤーに対してどれくらい打数を稼げるかが以下です。
<飛距離200ヤード>
フェアウェー:0.01打損
ラフ:0.17打損
バンカー:0.46打損
リカバリー:0.93打損
<飛距離210ヤード>
フェアウェー:0.01打稼ぎ
ラフ:0.14打損
バンカー:0.41打損
リカバリー:0.91打損
<飛距離220ヤード>
フェアウェー:0.03打稼ぎ
ラフ:0.11打損
バンカー:0.37打損
リカバリー:0.88打損
<飛距離230ヤード>
フェアウェー:0.05打稼ぎ
ラフ:0.08打損
バンカー:0.32打損
リカバリー:0.86打損
<飛距離240ヤード>
フェアウェー:0.07打稼ぎ
ラフ:0.05打損
バンカー:0.28打損
リカバリー:0.83打損
<飛距離250ヤード>
フェアウェー:0.09打稼ぎ
ラフ:0.02打損
バンカー:0.23打損
リカバリー:0.82打損
これはラフの深いアメリカのコースでのプレーデータをもとに計算しているからでもありますが、このデータだけ見ると、250ヤード飛んでラフに入るよりも、200ヤード飛んでフェアウェーに止まる方が打数を稼げるというデータになります。
更には同条件で飛距離が180ヤードでフェアウェーに止まった場合、スクラッチプレーヤーに対して損する打数は0.15打ですが、これは250ヤード飛んでバンカーに入るよりも損する打数が少なくなっています。
SGでは75パーセンタイル飛距離が長いプレーヤーの方がスコアはよくなるというデータを紹介していますが、ことラウンド中ではちょっとくらいの飛距離を無理してバンカーに入れるくらいならフェアウェーキープした方が打数を稼げることも示しています。
2.アプローチ(上記を除く100以上のショット)について
書籍「ゴルフ データ革命」やこのGolfmetricsの中では100ヤード以上のショット(ただしパー5とパー4のティーショットを除く)のことを、それがフェアウェイウッドで打とうがユーティリティーで打とうが直ドラで打とうがアプローチと呼んでいます。
この日はアプローチで5.4打損していました。
Golfmetricsでは、アプローチ、ショートゲーム、パッティングは距離別に内訳を集計して計算してくれる機能もあります。
この日、アプローチでは距離別に以下のように打数を損していました。
・100~150ヤード:3.2打損した(この距離を10回打っているので1ショットあたり0.32打損している)
・150~200ヤード:1.3打損した(この距離を2回打っているので1ショットあたり0.65打損している)
・200~250ヤード:0.1打損した(この距離を2回打っているので1ショットあたり約0.5打損している)
・250ヤード以上:0.8打損した(この距離を3回打っているので1打あたり約0.27打損している)
これらのデータを見ると、合計で最も損した距離は100~150ヤードですが、1ショットあたりで最も損した距離は150~200ヤードだったと言えます。
この日のアプローチで特に打数を損していたのは以下のショットでした。
1位・15番のセカンド
残り180ヤードの隣のコースからのショットが気に当たり20ヤードしか前進しなかった
→0.86打損
2位・3番パー3・135ヤードのティーショット
残り20ヤードのバンカーに入れた
→0.67打損
3位・9番のセカンド
残り110ヤードのフェアウェーから残り15ヤードのバンカーへ
→0.62打損
4位・2番のセカンド・残り320ヤードのフェアウェー
ダフり気味に入って80ヤード先のフェアウェーへ
→0.59打損
5位・14番パー3・125ヤードのティーショット
左からせり出したOBを避け右のラフにこぼした
→0.57打損
6位・5番のセカンド・残り150ヤードのフェアウェー
シャンクして残り40ヤードのフェアウェーへ
→0.56打損
7位・18番のセカンド・残り130ヤードのフェアウェーから左からせり出したOBを避けて右のラフ残り20ヤードへ
→0.52打損
8位・15番のサード・隣のホールから残り160ヤード
残り15ヤードのバンカーに入れた
→0.47打損
9位・8番パー3・145ヤードのティーショット
ショートして残り20ヤードのフェアウェーへ
→0.34打損
10位・2番のサード・残り240ヤードのフェアウェー
打ち上げのため距離が出ず140ヤード先のフェアウェーへ
→0.29打損
10位・11番のサード
残り150ヤードのフェアウェーから花道残り20ヤードへ
→0.29打損
この日は前半アウトが47、後半インが40の87でしたが、アプローチは明確にインよりアウトのミスが多かったです。
上記の11個の大きなアプローチで損したショットのうち、アウトは6個、インは5個ですが、このうち14番のティーショットと18番のセカンドは大きくせり出した左のOBが危険なので、グリーンを狙うよりは右のラフを狙った方が安全なホールなので、これはミスには含めなくてよいと考えた方がよさそうです。
11番もグリーン奥にこぼすとややこしいため、花道が安全なホールであり、これもSGで出て来るほどのミスではないため、インのアプローチの大きなミスと言えば、15番の隣のホールから打った2回のミスくらいだと言えそうです。
そう考えると、この日の前半と後半の7打のスコアの違いの大半はアプローチの差が大きかったと言えそうです。
この日、アプローチで大幅に打数を稼いだのは4番で残り150ヤードから10フィート(3メートル)にオンして0.45打稼いだショットと、17番の残り240ヤードのフェアウェーバンカーから下りを転がって170ヤード飛んで残り70ヤードのフェアウェーにつけて0.20打稼いだショットの2回のみ。
SG指標によると上級者とアベレージゴルファーの打数の差で最も大きいのはアプローチであり、アプローチで打数を大幅に稼ぎにくいことを考えても、普段からアプローチの練習をするだけでなく、ラウンド当日はアプローチで大きなミスをしないようにすることが重要だと言えそうです。
3.ショートゲーム(100ヤード以内のショット)について
この日はショートゲームで7.4打損しており、スクラッチプレーヤーに対して最も多く打数を損した日でした。
内訳は以下です。
・0~20ヤード:3.2打損した(この距離は13回打っているので1打あたり約2.5打損している)
・20~60ヤード:1.0打損した(この距離は1回打っているので1打あたり約1.0打損している)
・60~100ヤード:2.3打損した(この距離は7回打っているので1打あたり約0.3打損している)
・100ヤード以内のバンカー:0.9打損した(5回打っているので1打あたり約0.5打損している)
全ての距離で少しずつ損していますが、トータルで最も多く打数を損しているのも、1打あたりで最も多く打数を損しているのも0~20ヤードであると言えます。
ところが、上述のように、この日、私は「20ヤード前後のショートゲームが好調だった」と思っていました。
その理由として、最近短い距離の寄せを練習していて手応えを感じていた上に、ショートゲームからの寄せ1で大きく打数を稼いだホールの印象が強かったからだと思います。
この日、20ヤード以内で打数を稼いだショットには以下のショットがありました。
1位・14番・残り20ヤードのラフ
ピンから1メートルにつけた
→0.55打稼いだ
2位・11番・残り20ヤードの花道
ピンから1.2メートルにつけた
→0.23打稼いだ
3位・13番・残り10ヤードの花道
ピンから60センチにつけた
→0.20打稼いだ
4位・18番・残り10ヤードのグリーン周り
ピンから60センチにつけた
→0.20打稼いだ
5位・9番・残り15ヤードのバンカーショット
ピンから2メートルにつけた
→0.09打稼いだ
6位・5番・残り20ヤードのバンカーショット
ピンから3メートルにつけた
→0.06打稼いだ
印象というのはこういう時はアテにならないものです。
上記の6回の20ヤード以内のショットの合計でスクラッチプレーヤーに対して稼いだ打数はわずか1.33打、1ショットあたりだとわずか0.2回程度しか打数を稼いでいませんでした。
スクラッチプレーヤーというのは私が想像する以上の寄せをするようで、思ったよりだいぶ打数を稼げていなかったことがわかります。
残り20ヤードのバンカーショットをピンから3メートルにつけても0.06打しか打数を稼げないくらいなのですから。
上記の打数を稼いだ20メートル以内のショット6回のうち、9番を除く5回で寄せワンを拾ったため、よほど近くに寄せたつもりでいたのかもしれません。
6回中4回が後半のインだったことも、その日全体が好調だったような錯覚を起こしていた原因かも知れません。
一方で、20ヤード以内で大きく打数を損していたショットには以下があります。
1位・6番残り20ヤードのバンカー
奥のラフ残り15ヤードにこぼす
→0.76打損
2位・8番残り20ヤードの花道
ピンを10メートルオーバー
→0.62打損
3位・2番残り20ヤードのラフ
凹凸超えでグリーンに届かず残り10ヤードのフェアウェーに止まる
→0.59打損
3位・13番残り20ヤードのラフ
凹凸超えでグリーンに届かず残り10ヤードのフェアウェーに止まる
→0.59打損
3位・18番残り20ヤードのラフ
凹凸超えでグリーンに届かず残り10ヤードのフェアウェーに止まる
→0.59打損
6位・1番残り15ヤードのフェアウェー
ピンから5メートルにしか寄らず
→0.53打損
中でもインの18番は「トリプルボギーでも初の90切り」という状況で3打目をショートしただけであり、「4打目を1オンし、そこから3パットでも90切り」と言う状況だったので悲観的にならなかったこともこのミスの印象を薄くしている要因だと思います。
また、上記の中でやはり6回中アウトが4回だったこと、インの13番はそこから寄せワンでボギーを拾えたこともやはりミスの印象を薄くしていると思います。
美らオーチャードゴルフ倶楽部はグリーン周りが凹凸になっている箇所が多く、このデータを見ると、凹凸超えのラフなどは練習が必要であることがわかります。
他にもショートゲームでは5番で残り40ヤードのバンカー超えのラフからのショットでバンカーに入れ1.05打損するなど、大きく打数を損しているものもありました。
印象ではなく、データで分析して課題を見つけることが重要だとわかる事例だと思います。
4.パッティングについて
そして、この日、スクラッチプレーヤーに対して最も打数を稼いでいたのはパッティングでした。
スクラッチプレーヤーに対してパッティングで損した打数はわずか0.1打。内訳は
・6フィート以内=1.8メートル以内(16パット):プラマイ0(稼いでも損してもいない)
・7~21フィート=2.1~6.3メートル以内(12パット):0.1打稼いだ
・22フィート以上=6.7メートル以上(2パット):0.2打損した
となっていました。
この日唯一、スクラッチプレーヤーに対して打数を稼いだのが7~21フィート(2.1~6.3メートル)のミドルパットでした。
特に稼いだのが以下です。
15番:17フィート(5メートル)を1パット
→0.88打稼いだ
10番:13フィート(4メートル)を1パット
→0.79打稼いだ
5番:10フィート(3メートル)を1パット
→0.7打稼いだ
このようなミドルパットが1発で入るようなパットがあると、大幅にパット数を稼ぐことが出来ます。
また、私は1~2メートルくらいのショートパットを外したせいでショートパットで打数を損することが多かったのですが、この日のショートパット(6フィート以内)は3番で3フィート(90センチ)を外したのが1回あったのみで、なんと16回あったショートパットはうち15回決めていました。
ミドルパットを1発で決めたことや、ショートパットを外したことはよく覚えていることが多いですが、「ショートパットを外さなかったこと」は覚えていることが少ないです。
したがって、このようなパットの分析も印象ではなく統計に基づくデータで検証することが大事だと感じます。
スマホアプリ「Golfmetrics(ゴルフメトリクス)」はこちら